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"ディクソンの歪んだ人種観はグリフィスの映画的能力によって、ユニバーサルでエモーショナルな説得力を付加された。『國民の創生』は、強力なプロパガンダ装置になった。ニューヨーカー誌の批評家リチャード・ブロディ..."

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ディクソンの歪んだ人種観はグリフィスの映画的能力によって、ユニバーサルでエモーショナルな説得力を付加された。『國民の創生』は、強力なプロパガンダ装置になった。ニューヨーカー誌の批評家リチャード・ブロディは「『國民の創生』の最悪な点は、これが映画として最高であることだ」と書いている(2)。

『國民の創生』がヘタクソな映画だったら、何の影響力も持たなかっただろう。しかし、運悪くグリフィスは天才だった。『國民の創生』は美しく、わかりやすく、サスペンスフルで、ロマンチックなエンターテインメントになった。言葉の通じない人々、南北戦争なんて知らない人々でも、北部人エルジーと南部人ベンが結ばれて「これが国民の創生だ」と締められるラストに感動した。

そして、この映画の力によって、とうの昔に滅んでいたKKKが復活し、多くの黒人たちがリンチされた。また、南部で進んでいた黒人の参政権と人種隔離撤廃の動きも後退し、実現されるまでにさらに45年以上を要した。

被害者は黒人だけではなかった。この映画の公開当時、イタリア、アイルランド、ギリシャ、ロシア、東欧から大量の移民がアメリカに流れ込んできていた。KKKの矛先(ほこさき)は彼ら非WASP(White Anglo-Saxon Protestant)に対しても向けられた。

新生KKKの暴威(ぼうい)に誰よりも驚いたのは当のグリフィスとディクソンだった。ディクソンは「聖母マリアだってユダヤ人だったんだ」とユダヤ系への迫害を批判し、新生KKKとは距離を置いた。

グリフィスは『國民の創生』で人種差別主義者と非難され、徹底的に傷つき、打ちのめされたという。それほど自覚がなかったのだ。彼は『國民の創生』で得た莫大な利益を注ぎ込んで次作『イントレランス』(1916年)を作り上げた。ここでグリフィスが描いたのは四つの時代の少数者に対する非寛容(イントレランス)。異教信仰のために滅ぼされる古代バビロン、エルサレムでのキリストの受難、カトリックがプロテスタントを殺した聖バルテルミーの虐殺、そして現代アメリカ、経営者に立ち向かった労働者たちが警察に弾圧される。『イントレランス』は人類史上の弱き者たちへの慈しみに満ちた映画だった。



- <第14回>『國民の創生(The Birth of A Nation)』 « なぜ『フォレスト・ガンプ』は怖いのか ― 映画に隠されたアメリカの真実 ―

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